国立国語研究所が所蔵する『悉曇蔵』の画像を公開しています。
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資料解説

 『悉曇蔵』全8巻は、元慶4(880)年に天台宗の僧安然が著したサンスクリット(梵語)の文字・音韻についての研究書である。密教では真言や陀羅尼を梵語の発音で唱えるため、梵語・梵字と、梵語の漢字による音訳語に関する研究分野(悉曇学)が重視され、発達した。『悉曇蔵』は、入唐僧がもたらしたサンスクリットについての文献を検討し、集大成したものである。
 国立国語研究所蔵本は、巻第一(請求記号 W142/A49/1、資料ID 1001153046)と巻第二(請求記号 W142/A49/2、資料ID 1001153012)が存する。楮紙。粘葉装。巻第一は、縦22.6cm、横14.8cm、界高(押界)20.3cm、半丁8行であるが、巻第二は、縦21.2cm、横14.4cm、界高(押界)17.8cm、半丁7行と、寸法・体裁が異なり、元来僚巻ではなかったのであろう。紙数は、巻第一が28紙(墨付54丁)、巻第二が26紙(墨付50丁)。
 巻第一の巻末には書写奥書があり、鎌倉時代永仁5(1297)年に豊前国矩久郡(企救郡か)で書写された本であることがわかる。
  (巻第一巻末書写奥書)
    於永仁五年[丁酉]五月廿七日於鎭西豐前國矩久郡吉田
     極樂寺書寫了   一校了
 また、巻第一、巻第二ともに表紙に「明通寺」と墨書され、巻第一の巻末には「若州遠敷郡棡山明通寺[常住]」、巻第二の巻末には「若狭松永庄内/明通寺常住/一校了」とあり、二冊とも若狭国明通寺に伝わった本であることがわかる。巻第一は豊前国で書写され若狭国に伝来し、巻第二の巻末を書写奥書とすれば、巻第二は若狭国で書写され、若狭国明通寺において一揃として扱われたものであろうか。
 二冊とも朱筆の訓点が施されている。ヲコト点は円堂点である。

更新履歴

 2015.9.11 公開

 2015.3.30 試験公開

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